【2021年】事故物件の告知義務ガイドラインについて

事故物件の告知については、これまで紆余曲折ある中で、ふわっとした暗黙の了解(業界ルール)で通ってきた経緯があります。

そのため、実際には後で裁判沙汰になることも多々あり、ようやく国交省が少しずつルール化しようと動き出しています。

 

2021年10月に策定されたガイドラインの情報が入ってきましたので、まとめてみたいと思います。

また、なぜルール化が求められているのかにも少し触れてみます。

 

あくまで現時点での話なので、またルール自体が変わっていくであろうことをご承知の上、読み進めてくださいね。

 

目次

「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」はなぜ必要か

長いタイトルになりましたが、正式名称はこちらになります。

以下、事故物件ガイドラインと表記します。

 

これまで、「この内容(自然死など)は伝えていないことが問題になるのか?」については、ケースバイケースで問題発覚や裁判になってみないとわからないという例が多くありました。

極端な裁判例だと、こんなものがあります。

 

・マイホームを建築するための土地売買取引のケースで、自殺が20年以上前のものであっても、仲介業者が事実を認識していれば説明義務がある。とする裁判例

 

いかがでしょうか。

「20年以上前なのに?」という意見もあれば、「やっぱり、知ってれば全部事前に教えてほしい」という意見もあると思います。(世の中、事実は一つでも受け取り方は多様ですね・・・。)

こちらの審議が本題ではないので、サラッと流しますが、こんな風に何をどこまで伝えればOKなのかが今までは曖昧でした。

これが、売買での物件流通を阻害する要因の一つになっています。

 

また、売買だけではなく、賃貸の場面でも困ることが多々あります。

何をどこまで伝えるのか、告知義務内容が曖昧なままで何が困るかというと、賃貸住宅で今後も増えるとされる高齢者入居の問題です。

 

国交省ホームページからの引用ですが、

・判断基準がないことで、所有する物件で死亡事故等が生じた場合に、全て事故物件として取り扱われるのではないかとの所有者の懸念。
 → 特に単身高齢者の入居が困難になる傾向

こういった社会問題がおきています。

 

こういった社会問題に向けて、少しずつ、線引きするために進められてきたのが事故物件ガイドラインになります。

 

 

事故物件ガイドラインの主な内容

参考:国土交通省のガイドラインページ

国土交通省の詳細内容を見たい方は、上のリンクからソースをお調べください。

 

先に引用します。(簡潔に言い換えたものだけ見たい方は飛ばして下にいってください)

【告知義務なし】

1:【賃貸借・売買取引】取引の対象不動産で発生した自然死(老衰や持病による病死など)、日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)

  ※事案発覚からの経過期間の定めなし。

2:【賃貸借取引】取引の対象不動産、日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で発生した「1」以外の死、特殊清掃等が行われた「1」の死が発生し、事案発生(特殊清掃等が行われた場合は発覚)から概ね3年間が経過した後は告知義務なし

3:【賃貸借・売買取引】取引の対象不動産の隣接住戸・日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分で発生した「1」以外の死・特殊清掃等が行われた「1」の死

  ※事案発覚からの経過期間の定めなし

 

引用するとこうなりますが、わかりにくいので、簡単に書き換えると、こんな感じです。

【告知義務なし】

1:老衰、持病による病死などの自然死と転倒事故、食事中の誤嚥などの事故死

2:自然死などでも死後の発見に時間がかかり、大規模リフォームや特殊清掃があった場合は3年間は告知必要、3年経てば告知不要

3:賃貸住宅での隣接住戸や、通常使わない共用部での死亡は告知不要

 

【告知義務あり】

1:自殺や殺人

2:通常使う共用部での死亡から3年以内

3:特段の告知が求められると判断された場合

 

 

この特段の告知が求められる場合というのはまだ曖昧でふわっとしていますが、少しは線引きがしやすくなってきた感じはしますね。

 

<その他、留意事項>
・亡くなった方やその遺族等の名誉及び生活の平穏に十分配慮し、これらを不当に侵害することのないようにする必要があることから、氏名、年齢、住所、家族構成や具体的な死の態様、発見状況等を告げる必要はない。

・個々の不動産取引においては、買主・借主が納得して判断したうえで取引が行われることが重要である。宅地建物取引業者においては、トラブルの未然防止の観点から、取引に当たって、買主・借主の意向を事前に十分把握し、人の死に関する事案の存在を重要視することを認識した場合には特に慎重に対応することが望ましい。

 

この辺はいかにも曖昧ですが、すごく気にされている方に関しては告知義務ガイドラインだけに頼らず、配慮して対応しましょう、ということのようです。

 

この記事のまとめ

1:事故物件の告知義務に関してガイドラインが制定された。とても良いこと。

2:ある程度の線引き基準は示されたが、やっぱり部分的にはふわっとしている。(業者目線だと困る)

3:これからも少しずつガイドラインが改定されていくだろうと思われるので、変化を注視する必要がある。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事を書いた人

中谷
中谷
普段は賃貸不動産の管理業務を主軸に、ビルメンテナンス業務の改善提案、電気代やガス代の見直し提案しています。
マイベストプロ大阪でも紹介いただいています
【保有資格】宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
2級FP技能士・基本情報処理技術者