デマンドコントローラとは? 監視装置との違いは?

目次

デマンドコントローラとは

デマンドコントローラとは、電力の大口需要家が使用する電力量を監視・調節する機能をもつ機械のことを指します。

デマンド値(次項目で解説)は毎月の基本料金に関わるため、ピーク時に電力を抑えることで、効率的な電気代削減を実現できます。

 

一般的にピーク時電力を大きく押し上げる要因は冷暖房機器のため、

冷暖房機器の運転・停止・出力制御を行う事によってコントロールを行うことが多くなっています。

つまり、デマンドコントローラとは全体的な電力使用状況の監視と、状況に応じて冷暖房機器の制御を行う機器となります。

(空調だけでなく、照明などを制御することもあります)

 

デマンド機器の構成図例

参考および図の引用:東京電力エナジーパートナーHPのデマンドコントロールシステム

 

そもそもデマンド値とは?

まず(高圧)電気料金におけるデマンド値とは30分間の平均電力kWの数値を指します。

このデマンド数値は1日48回計測され(毎時0-30分と30分~00分の2回)、

計測器によって1ヶ月の中での最高値を記録するようになっており、

各月の最高値のデータから、最も高いデマンド値を契約電力として決定し、基本料金の算出に使われています。

 

つまり、1度髙いデマンド値を記録してしまうと、1年間髙い基本料金を払うことになります。

簡単に言い換えると、一気にいろんな機械を動かして電力を使った30分間ピーク時電力(契約電力)として記録されてしまう感じです。

 

実際の数字に置き換えて詳しくみてみましょう。

 

契約電力とは? 電力基本料金の計算について

デマンド値の図

上のイメージ図の場合、翌年の2月が来て、上限値が下がるまでは100kWが契約電力となります。

 

【関西電力様の高圧電力AS契約での計算例】

高圧契約基本料金 = 契約電力(kW) x 基本料金単価 x 力率割引

こちらが基本料金の計算式です。

 

つまり、上のイメージ図の数値を使って計算すると、こうなります。

基本料金(176,550円)= 契約電力(100kW) x 基本料金単価(1765.5円) x 力率割引(なしとする)

あまり電力を使わない春や秋にも、デマンド値が変わらない限り、基本料金はずっと上記金額を払うことになります。

そしてデマンド値は直近の1年間で最も高かった月の数値を採用します。

つまり、主に夏や冬の冷暖房機器を暑さ(寒さ)のピークでフル稼働した30分が基本電力値となってしまうことが多いのです。

※冷暖房機器よりも、電力を大量に消費する製造機械を動かしている工場などは、製造機械電力のコントロールが大事になります。

 

 

もし、仮にデマンドコントール機器を導入して、冷暖房機器の調節を行い、2割程度ピーク時電力量を下げられたとします。

すると、毎月の電力請求はこうなります。

基本料金(141,240円)契約電力(80kW) x 基本料金単価(1765.5円) x 力率割引(なしとする)

毎月35,310円の電気料金削減となり、直近1年間と比較すると、毎月削減となりますので、1年間で約42万円の削減ができます。

 

もちろん、実際には導入にあたって設備導入の費用がかかります。

年間の削減金額試算をもとに、どの程度でペイできるのかを検討することになります。

 

また、詳しくは後述しますが、

近年では削減した電気代の一部から費用を払う、完全成果報酬型で売り出している企業もあります。

削減額試算とコンロール機器に自信があるところが成果報酬型の導入方法を行っているようです。

 

デマンド監視とコントローラの違いは?

デマンド監視装置:あらかじめ設定したデマンド値を超えそうになった場合にアラート(警報・メールなど)を送る機械

デマンドコントローラ:あらかじめ設定した目標値に基づいて、空調機器や照明などを運転停止・温度設定変更をするなどして、自動で制御する機械

 

つまり、デマンド監視装置の場合、デマンド値が上がりそうだから危ないよと伝えてはくれますが、機械を止めたり制御したりするのは自分たちで行うことになります。

 

デマンドコントローラの場合、最新のものは冷暖房機器の設置場所や内容などを事前に細かく設定し、暑さ・寒さに影響が出にくいように計算しながら制御をしてくれます。

 

設置の使い分けとしては、建物の広さや機器の多さです。

ざっくり、デマンド監視装置は小規模~中規模施設、デマンドコントローラは中規模~大規模施設となります。

また、デマンドコントローラは冷暖房機器の台数が少ないとあまり効果が発揮できません。

逆に言うと、建物は小さめでも冷暖房機器が多い施設はデマンドコントローラのほうが向いていることもあります。

 

どういう企業・業種に向いている機械なのか

デマンドコントロール機器で制御するのは主に冷暖房機器です。

つまり、全体の電力使用に対して、冷暖房機器が占める割合が髙い業種・建物が最も効果を発揮します。

参考:資源エネルギー庁の節電行動計画資料

上記資料は2011年のデータなので、若干変わっているとは思いますが、業態ごとの傾向の参考になります。

一部抜粋すると以下のようなイメージです。

 

【オフィスビルの電力消費内訳】

オフィスビルの空調比率

 

【卸・小売店の電力消費内訳】

卸・小売店の空調比率

 

【食品スーパーの電力消費内訳】

食品スーパーの電力消費内訳

 

【学校の電力消費内訳】

学校の電力消費内訳

 

【飲食店の電力消費内訳】

飲食店の電力消費内訳

 

【ホテル・旅館の電力消費内訳】

ホテル・旅館の電力消費内訳

 

【医療機関の電力消費内訳】

医療機関の電力消費内訳

 

【製造業の電力消費内訳】

製造業の電力消費内訳

 

あとここにはデータがありませんが、パチンコ店なども空調比率が高い業種といえます。

 

デマンドコントローラ 導入検討のポイント

もちろん、上のデータをそのまま鵜呑みにすることはできません。

オフィスビルでも、全館空調を一括管理している建物と、小さなビルで各部屋のエアコンは各部屋で独立して設置しているビルではまったく電力消費内訳が異なります。

 

イメージするポイントは業務用エアコンの台数と電気代の金額です。

実際にはデマンドコントロール業者に試算を依頼する場合、

年間の電気代明細やエアコン機器のリスト(エアコン台帳や固定資産台帳の空調機器部分)をもとに、行われます。

 

また、春や秋と夏や冬の電気代の差は空調によるところが多いため、

季節ごとの電気代の差が大きなと感じる施設・建物は導入検討する価値があると思います。

 

デマンドコントローラを導入すると1年またなくても契約電力が変更できる可能性がある

繰り返しになりますが、デマンド値は直近1年間の最高値を計算の基準とします。

その数値を契約電力として採用する制度になっています。

基本的にデマンド値が高くならないように電気機器の使用を調節する努力を行っても、1年間は高い契約電力での基本料金を支払う必要があります。

デマンド値の図

図は再掲になりますが、このイメージ図の場合、12月や1月に電力ピークを調節する努力を行っても、

来年の2月を低く抑えることに成功するまではデマンド値が変わりません。

 

ただし、デマンドコントローラを導入することにより、デマンド値を抑えることできると電力会社に申請(協議)することにより、

デマンド値を基準月まで待たなくても見直すことが可能です。

 

これは電力会社に認められたデマンドコントローラを導入し、

電力会社に事前申請(事前協議)する手続きを行って初めて実現しますので、

デマンドコントローラ導入検討の際には、きちんと確認することをおすすめします。

 

なぜ電力会社は契約電力の見直しに応じるのか

電力会社からすると、デマンド値(契約電力)が高いと、発電準備(発電施設の稼働)をする必要があります。

ピーク時需要として、電力の使用要求があった場合に供給できる準備をする必要があるためです。

 

発電施設の稼働も使われずに遊ばせている分だけ損失が出ます。

発電側の理想は、損失をなくすため、10の電力使用に対して発電量を10で合わせることです。

 

そのため、無駄のない契約電力に見直し、ピーク時をコントロールできるデマンドコントローラの導入があれば、デマンド値(契約電力)の見直し協議をしてもらえるという流れになっています。

 

電力を使用する側も、発電する側も、過剰な余力はない方が好ましいということですね。

成果報酬型の機器導入とは

一般的に機械ものなので、

初期費用として機械代+設置工事費用が発生します。

この費用をこれから削減できる電気代で、何年かかってペイできるのか?を考えるのが一般的な導入検討パターンです。

 

ただ、デマンドコントローラは色々な会社が製品を生み出していて、

いくつかの会社では導入時には費用をいただかず、導入後に月々費用をもらう、

初期費用ゼロ円の売り方をしているところがあります。

これはデマンドコントローラ導入により、電気代を削減をできるため、

導入後だと費用捻出する負担が少ないため導入しやすいというメリットがあります。

 

また、さらに踏み込んだ企業では、

完全成果報酬型として、削減できた電気代金額から一定期間、一定割合で費用をもらうという売り方をしているところもあります。

この企業のすごいところは、削減額が少ない月からは少ない金額しか支払う必要がないという点です。

削減できる試算の精度に自信があるからこそできる売り方ですね。

 

ちなみに弊社は自社でデマンド機器は売っておりませんが、

別事業(建物メンテナンス)の一環として、デマンド関係のご相談を受けたときに提携している専門企業をご紹介しています。

もしデマンドコントローラ導入検討でお困り企業様がいらっしゃいましたら、筆者(中谷)までご相談ください

提携企業の導入事例や削減試算検討の電気代目安などをご返信にてお伝えいたします。

デマンドコントロールの研究を20年以上続けて、大企業から中小零細事業所まで数千台の実績を持つメーカーです。

 

最近のデマンドコントローラの進化など

まず、従来はデマンドコントロール親機と冷暖房機器(室外機)の間には物理的な配線が必要でした。

冷暖房機器を制御するタイミングで親機から指示を送る必要があるためです。

近年、これを無線で行える機械が出てきており、配線工事がかなり削減できるようになってきています。

 

また、導入企業様側のよくあるご不安点として、冷暖房機器に制御ユニットを後付する事によって、

冷暖房機器のメーカーから保守や点検を断られないか、というご意見があります。

主要冷暖房機器のメーカーは制御機器後付用の専用の部品を用意しており、

こちらもデマンドコントローラ導入検討の際に、導入後のことも考慮されて工事しているか確認されることをおすすめいたします。

 

まとめ

デマンド監視機器とデマンドコントローラの違いやデマンドとは何か、どうして電気料金削減につながるのかをまとめてみました。

電気代が発電コスト増によって高止まりしている2021年~2022年現在、電力会社切り替えによる見直しが難しい状況になっています。

そのため、デマンド値を下げて契約電力の見直しを行って電気料金を削減できるデマンドコントロール機器に注目が集まってくると思います。

弊社の提携企業のご紹介もできますので、お困りの方は無料相談フォームよりお気軽にご相談くださいませ。

 

 

 

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この記事を書いた人

中谷
中谷
普段は賃貸不動産の管理業務を主軸に、ビルメンテナンス業務の改善提案、電気代やガス代の見直し提案しています。
マイベストプロ大阪でも紹介いただいています
【保有資格】宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
2級FP技能士・基本情報処理技術者