アパート1棟無料インターネット設備の比較や違いとは【仕組み解説】

更新日:2022/5/16

 

こんにちは! アクセスありがとうございます。

でききるだけ専門用語を少なく、現場の声を交えながら、

アパート、マンション向け全戸無料インターネット設備の仕組み解説記事をまとめていきます。

 

多くのオーナー、管理会社が『アパート・マンション向けの無料(Wi-Fi)インターネットを導入するためには、何から手をつけて良いかわからない』と感じているようです。

記事の中盤でタイプ別にイメージ図を描いてみましたので、そこを見てもらえばある程度イメージがわきやすいと思います。

 

 

全戸一括インターネット設備の話なので、今回はあまり触れないですが、
全戸ではない、個別インターネット設備とは、戸建てでNTT等にインターネット回線契約をするように、マンションの居住者が個別に回線契約を申し込みする方式です。
費用も入居者持ちの、いわゆる従来の個別加入という方式ですね。

ネットワークのイメージ図

目次

そもそも、アパート・マンション入居者向け1棟無料インターネット設備とは

不動産オーナーが全戸分のインターネット回線費用及び通信設備を契約し、毎月費用を払い、
入居者には無料(有料の場合もあります)にて、インターネット回線サービスを提供する仕組み(になっている物件)のことを言います。

オーナーの支払う費用は家賃や共益費に上乗せすることもありますが、他物件への価格優位性確保のため、上乗せしない場合もあります。

 

お金の流れ、ビジネスモデルを簡単に図解してみました。

 

運用を開始した跡は、入居者から不具合などで連絡する先はサービス提供会社直接となることが多いです。(管理会社に電話がきた場合でもそちらを案内する)

提供回線の速度や品質があまりも悪い場合と、保守サービス窓口の対応があまりにも悪い場合を除き、基本的には管理会社やオーナーとしての手離れは良いです。

 

特に単身向け物件に多く設備されている傾向で、新築住宅には最初から設備されていることが多くなってきています。
また、賃貸物件ポータルサイト(スーモなど)にも「インターネット無料」という設備チェックボックスがあり、求める方がポチッと押すと、その時点で設備のない物件が検索結果から外れることにもなってきています。

今後、品質の高いインターネット設備があるかないかという点は(特に立地だけで決まる都市部の駅前物件以外において)物件差別化に繋がることが考えられます。

 

アパート・マンション入居者向け1棟無料インターネット設備はどうやって導入しているのか

サービス契約先は主にマンションISP業者と言われる業界の会社になります。

【マンションISPとは】
ISPはInternet Service Provider(インターネットサービスプロバイダー)の略称で、
インターネットへ接続するには、「物理的な回線工事」と、「通信をインターネットへ接続させる部分の取次業務」を行っている会社(プロバイダーといいます)が必要で、両方をマンション向けにワンストップサービスで提供している会社のことを指します。

設備導入までの流れとメリット・デメリット

導入を検討したい物件情報を業者に伝え、現地調査を依頼

建物の情報や住所を伝え、簡単な提供サービスの説明や顔合わせをして、

現地調査してもらうところからスタートすることが多い

現地調査後、設備・サービス内容と見積もりの確認

初期費用及び毎月かかる費用の確認とどんなインターネット回線を引いて、各住戸にはどんな接続設備がつくのかを確認

内容に納得できればサービスの申込み

1~2ヶ月後 工事(宅内・宅外・インターネット回線)

大元のインターネット回線開通におよそ1~2ヶ月かかる

回線開通の目処がたてば、共用部への機器設置と宅内への配線工事(ある場合)を行い、サービス提供が開始

サービス開始確認後、初期費用の支払いなど

初期工事費用はこのタイミングで支払いが一般的

ここから毎月の回線費用及び保守対応費用が必要になる

初期費用について

初期工事費用を毎月の分割払いで希望される方も多いため、多くの会社で、初期工事費用を月々の費用に分割して支払うサービスも選べます。(多くが5~6年分割)

その場合は「毎月のサービス保守費用」+「初期工事費用の分割払い」の合計金額を毎月支払うことになります。

初期に一括して支払うよりも金利分が上乗せされてしまいますが、手元に現金を残せるため、賃貸経営上、分割で支払う方も多くいらっしゃるようです。

よく、「無料インターネット設備、初期費用ゼロで導入できます!」と宣伝されてる仕組みはこんな感じです。

別パターンとしては、別サービスとの同時導入で割引(導入費ゼロ含む)されることもあります。

プロパンガス会社切り替えとのセット売りなどもありますね。

 

 

【入居者からみた全戸導入型のインターネット設備のメリット】
・入居直後からインターネットが使用可能
(契約プランによっては、無線(Wifi)も設備に含まれていることもあり)
・個別加入ではないため、物件退去時に解約違約金や契約先への引き継ぎなどを考えなくて良い
・仮に無料ではなく費用のかかるプランでも、個別加入よりは安い

【デメリット】
・インターネット設備の品質によっては、速度が遅いことが不満(クレームの火種)になる
・個別加入の場合は受けられる、「携帯電話のセット割引サービス」などが、契約名義がオーナーのため受けられない
・(オーナー側デメリット)部屋内にルーターなどを機器を個別に設置する場合、退去時に持っていかれることがある

導入するときに気をつけるポイント

・5年や6年契約縛りになることが多いため、契約期間が終了したときに古くなった機器の交換やサービス継続がどうなるのか確認する
・保守費用の中に、機器の故障時対応など、コールセンター費用以外にどこまで保守サービスが含まれているか確認する
・機器が壊れたときに、何日程度で復旧できるか確認する(あまりに遅いとクレームになります)

 

【図解あり】アパート・マンション入居者向け1棟無料インターネット設備の比較や違いについて

全戸向けインターネット無料設備の中にも種類や違いが存在します。
大きくわけて4種類あります。

・光回線各戸専有型
・光回線-LANケーブル型
・同軸ケーブル型(テレビ線)
・共用部にWi-Fiアンテナ設置型(最近は傾向)

 

配線方式別の種類と比較表

 各住戸までの
回線
各住戸内の
配線工事
費用最大通信速度
光回線各戸専有型光ファイバーあり高め1Gbps
(各住戸専用)
光回線-LANケーブル型LANケーブルあり真ん中1Gbps
(複数住居で共有)
同軸ケーブル型
(テレビ線)
同軸ケーブルなし安め下り320Mbps
上り10Mbps
共用部Wi-Fi
機器設置型
配線無しなし安め電波の通り具合によって
変動する

 

この辺からだんだん、読みすすめるのがしんどくなると思いますので、
配線の流れや設備構成を極力専門用語使わず、ざくっと絵にしてみました。

 

光回線各戸専有型

光回線各戸専有型

 

光回線-LANケーブル型

光回線-LANケーブル型

 

 

同軸ケーブル型(テレビ線)

同軸ケーブル型

 

共用部にWi-Fiアンテナ設置型

共用部にWi-Fiアンテナ設置型

さて、これらをどうやって選ぶのか、オススメをざっくり書いてしまうと・・・

費用はかかっても良い、高品質を選ぶ!なら光回線専有型

品質も求める、でも費用は中程度が良い!なら光回線-LANケーブル型

宅内工事はできるだけ避けたい!かつRCやSRCの建物なら同軸ケーブル型

宅内工事はできるだけ避けたい!
もしくは費用を極力抑えたい!かつ木造やの鉄骨アパート(28戸以下)なら共用部Wi-Fi型

 

 

少し詳しく見ていきましょう。

 

 

【光回線各戸専有型】
最も高速通信、かつ安定性が高い。
費用が最も高い。
専有型のため、別の部屋の使用状況の影響を受けない。

松竹梅でいうと、松モデル。

・こちらはNTT西日本・東日本様のサービスが有名です。料金高めだけど高品質。値段はさておき、回線の高品質を求めるならNTT西や東が良いです。次のLAN型と2つ見積もりとってみて比較もありですね。

NTT西日本のサイト

NTT東日本のサイト

 

【光回線-LANケーブル型】
最もマンションISPで一般的なモデル。サービス提供会社も多い。
回線速度と安定性が比較的高い代わりに、各部屋内で工事が必要。
費用も中程度かかる。
同じマンション内で同一時間帯に一斉につなぐと通信速度が遅くなったりする。

松竹梅でいうと、竹モデル。

≫月額費用がお手頃の「アイネット」

このタイプはサービス提供会社が多いため、オススメ会社をリンクしています。

オススメ理由:実際に導入した東京の知り合いオーナーから話を聞いたところ、月額のお値段安めで保守コールセンターが24時間対応+窓口が外注ではなく自社の方であるため、導入後のトラブルが起きにくい様子。

 

【同軸ケーブル型】
すでに敷設されているテレビ線に相乗りさせるイメージのため、
初期の工事費が安い。また各部屋の工事が不要。
配線種類の関係上、通信速度に上限がある。
将来、どんどん通信速度が求められるようになると、少し厳しくなってくるかも?

松竹梅でいうと、竹モデルの変化球。

・こちらはケーブルテレビ等の会社が多いです。J:COM様とか、近鉄ケーブルネットワーク様とか。

 

【共用部Wi-Fiアンテナ設置型】
小規模アパート限定の方式。導入が簡単。
屋内ではなく、外から電波を飛ばすため、壁の材質や部屋の作りによっては繋がりにくい。
主に木造や軽量鉄骨の物件で、事前の電波調査必須。(サービス提供会社が行ってくれます)
各部屋への工事は不要で、初期工事費も安い。
2~4部屋で1つの無線ルータを共用するため、隣接する部屋の使用状況によっては通信速度が遅くなったりする。
機器がすべて共用部のため、メンテナンスが容易。

松竹梅でいうと、梅モデル。

・こちらはごく一部の会社のみが提供しています。

バッファローのサイト

 

すでに賃貸として運用している建物の場合、入居者がいる部屋に勝手に入ることはできないため、各部屋内の工事調整が発生するモデルは、かなり手間になります。
物件状況と手間、費用(イニシャルおよびランニングコスト)にあった方式を選べると良いですね。

実際に共用部Wi-Fiアンテナ設置型を管理物件に導入した事例

バッファローアパートWifi

弊社の管理しているアパートにすでに入っていたインターネット設備が遅く、動画の視聴などには適していない話が以前からありました。

そこで、極力費用を少なく、回線速度は事前調査してある程度確認した上で、部屋内工事もなしで導入できるバッファローさんのアパート向けWi-Fiをオーナーに導入提案し、実際に施工いたしました。

工事提案時は1室空き部屋があり、間取りはすべて同じだったので、部屋内で電波がどの程度飛ぶのか調査をできたので、導入後のクレーム等は今の所(導入して4年程度)ありません。

現状、満室運営できているので、オーナー様にもご納得いただけており、安心しています。

 

【物件などの概要】

・2階建て10室のアパート

・初期工事費用として約35万円

・ランニングコストとして保守費用込みで、1200円程度/1部屋

※初期工事費用を6年の分割料金として契約することも可能なことが嬉しい!

(うちの管理物件導入時は分割払いで初期0円で工事の方向になりました)

 

「入居者に人気の設備ランキング」でも上位を維持

弊社も過去に2回ほど記事として取り上げていただいた「全国賃貸住宅新聞社」より毎年「入居者に人気の設備ランキング」が発表されています。

その記事によると、インターネット無料設備は2021年10月発表分で6年連続1位となっており、単身・ファミリーともに1位という、不動の地位を確保しつつあります。

そんな中、「無料インターネット設備あります!」と謳っている物件が増加し、次は通信の品質が求められてきているのです。

普及時期の今は、攻めの設備でもあるし、守りの設備でもあるということですね。

 

 

【2021年度版】この設備があれば周辺相場より家賃が高くても決まるTOP10

単身者向け物件ファミリー向け物件
1位インターネット
無料
1位インターネット
無料
2位宅配ボックス2位エントランスの
オートロック
3位エントランスの
オートロック
3位宅配ボックス
4位高速インターネット4位システムキッチン
5位浴室換気乾燥機5位追いだき機能
6位独立洗面台6位浴室換気乾燥機
7位システムキッチン7位ホームセキュリティ
8位24時間利用可能ごみ置き場8位高速インターネット
9位防犯カメラ9位ガレージ
10位ウォークインクローゼット10位24時間利用可能ゴミ置き場

出典:全国賃貸住宅新聞2021.10.18

2021年度版に更新しましたが、今年から高速インターネットという項目がアンケートに追加され、早速ランクインしています。

 

急増!?アパート・マンション入居者向け1棟無料インターネット設備による入居後のクレームとは

便利な設備にも、悪いところが当然あります。

時事ネタになりますが、新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワークやWEB会議、オンライン授業など、インターネットを使い動画や音声をリアルタイムで送受信したり、業務用のデータを家庭で編集するなど、大容量のデータをインターネットでやり取りする機会が多くなってきています。
また、在宅時間が増え、ネットショッピングや動画配信サービスで余暇を楽しむ方も増えています。

 

そんな中、速度の遅いインターネット設備を使用している物件では「動画の配信が止まる」「速度が遅い」「声と画像がずれる、飛ぶ」など、クレームの声が上がってきていると聞きます。

一昔前、建物を建てる際のテレビの配線工事を割安にする代わり、(今となっては)低速のインターネット回線を付属させるサービスが広がった部分もあり、時代に合わせて、建物全体のインターネット環境の見直しをするタイミングになってきているとも言えます。

 

できるだけ、入居後のクレームの元は改善していきたいですよね。

なので、導入(更新)の際は、ある程度のサービスや設備の違いを把握して、需用と物件に合ったものを導入(更新)していきましょう。

実際、とあるポータルサイト運営の社員さんに聞いた話では、速度のかなり遅い無料インターネット設備は、ポータルサイトへのクレームまでつながっている事例があるらしく、ポータルサイト側も困っているという話を聞いています。
例:「無料インターネット物件と見て入居したのに遅すぎて使い物にならなくて、結局自分で別契約をした」など
(2019年の夏頃に聞いた話なので、今は、よりひどくなっているかもしれません)

 

導入後のトラブルについて

1:Wi-FI機器等持ち出しトラブル
主流な部屋内に機器を設置するタイプの場合、現在は改善されていることが多いのですが、過去はWi-Fiルータを間違って退去時に持っていくトラブルがおこりました。
そこで登場したのがこちら。

情報コンセント 画像は因幡電機産業様より引用させていただきました。

情報コンセントといいます。
「Wi-fiの機械をコンセントに一体化して埋め込んでしまえば、持ち出されないよね!」という画期的なかたちです。
あと、配線がごちゃごちゃしなくて、スッキリするというメリットもあります。

ただし、アンテナの位置がコンセント部分に固定されるため、このコンセントから遠い部屋は少し電波が弱くなる傾向もあります。
現在は部屋内工事をする方法の場合、情報コンセントを取り付けて導入することが多いです。

 

2:通信速度の品質のクレーム
冒頭にも記載した通り、通信速度と品質も求められることがあります。

なので、どの方法がコストと合わせて自分の物件にあっているか、きちんと調べてから導入しましょう。

目安としては動画視聴の場合

【Youtubeの推奨環境から抜粋】
動画の綺麗さ:推奨される持続的な速度
  4K :20 Mbps
HD 1080p : 5 Mbps
HD 720p :2.5 Mbps
SD 480p :1.1 Mbps
SD 360p :0.7 Mbps

Web会議などで最近流行りのシステム(Zoom)の場合
【Zoomの推奨環境から抜粋】
動画の解像度:推奨される持続的な速度
・1対1ビデオ通話
HDビデオ  :1.2Mbps
高品質ビデオ:0.6Mbps

・グループビデオ
HDビデオ  :1.5Mbps
高品質ビデオ:0.6Mbps(上り)1.2Mbps(下り)

※上りはアップロード、下りはダウンロードの速度
※2020年年末情報

まとめ

・アパート・マンション向け全戸無料インターネット設備の需要がさらに高まる傾向にある

・さらに、何でも良いというわけではなくある程度の品質が求められ始めている

・一昔前のテレビ配線と抱き合わせたインターネット設備環境だと、速度や品質が悪く、見直しの時期にきている

・全戸インターネット無料設備!といっても種類があるので、ざっくり違いを把握して、物件ごとのニーズを考えて選びましょう

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

アイネット光

 

 

この記事を書いた人

中谷
中谷
普段は賃貸不動産の管理業務を主軸に、ビルメンテナンス業務の改善提案、電気代やガス代の見直し提案しています。
マイベストプロ大阪でも紹介いただいています
【保有資格】宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
2級FP技能士・基本情報処理技術者