【居住用向け】普通賃貸借契約と定期賃貸借契約の違い

「定期賃貸借契約」「定期借家」という言葉を聞いたけど、一般的な契約の時と何が違うのかについてわからない方も多いと思われます。

今回は居住用のお部屋を借りるときの2つの契約方法について、できるだけシンプルに違いを書いていきます。

メリット・デメリットのみ見たい方は目次から飛ばしてお読みください。

 

目次

お部屋を借りるための賃貸借契約は2種類あります

「普通建物賃貸借契約」と、「定期建物賃貸借契約」の2種類が存在します。

最も大きな違いは、お部屋を貸した(借りた)あとに、契約期間に期限があるかないかです。

 

定期賃貸借の場合は、「定期」の言葉どおり、期限がきたときに確定的に退去となります。

書くと一行ですが、これがとても重要です。

※再契約条項があれば有効です。

※1年以上の契約期間の場合、退去予告(契約終了予告)を6ヶ月前に行わなければなりません。

 

普通賃貸借の場合は、貸主(オーナー)が退去をしてほしいと思っても、

「正当事由」がなければ退去をしてもらうことができません。

※双方の合意による解約は可能です。貸主からの一方的な通知による解約ができません。

 

この「正当事由」の成立はかなりハードルが高く、裁判で認められるかどうかの話になります。

1:貸主自身が居住し、または営業する必要がある

2:貸主の親族または従業員が使用する必要がある

3:やむを得ず生計のために売却する必要がある

4:借家の大修繕あるいは取壊しの必要性がある

5:貸主が立退料を提供したとき  ……など

その他、家賃の滞納・度重なる迷惑行為をやめない・賃貸借契約違反・悪質な行為などによって、立ち退きが認められるケースもあります。

この場合は信頼関係や破壊されているかどうか、という話になり、過去の判例などを参考に判決が出ます。

 

話を戻します。

 

定期借家契約では、契約期間の満了により確定的に契約が終了します。

そのため、期間満了で契約が終了する場合は正当事由や立退料という概念はありません。

もちろんメリットだけではなくデメリットもありますので後述でまとめます。

 

先にざっくりとした比較表をご覧ください。

(内容は国土交通省のホームページを参考にしています)

 定期賃貸借契約普通賃貸借契約
契約方法

1:公正証書等の「書面」による契約に限る

2:賃借人は「更新がなく、期間の満了により終了する」ことを契約書等とは別に、予め書面を交付して説明しなければならない

書面による契約でも、口頭による契約でも有効

(紛争防止のため、書面を推奨)

更新の有無

期間満了により終了し、更新がない

(ただし、再契約は可能)

更新される

(賃貸人による更新拒絶等に正当事由がある場合を除く)

契約期間

制限なし

(1年未満の契約も可能)

1年未満の契約期間を定めた場合は、期間の定めのない賃貸借契約とみなされる
賃貸借の増減に関する特約の効力賃借料の増減は特約の定めに従う当事者は賃借料の増減を請求できる
賃借人からの中途解約の可否

1:床面積が200㎡未満の居住用建物で、やむを得ない事情により、生活の本拠として使用することが困難となった借家人からは、特約がなくても法律により、中途解約ができる

2:上記以外の場合は中途解約に関する特約があればその定めに従う

中途解約に関する特約があればその定めに従う

 

定期賃貸借契約(定期借家)のメリットとデメリット

本題にもどります。

定期借家契約は契約期間終了時には終わる契約です。

貸し手から見ると賃貸契約を終わらせられる権利を確保できるため、期間限定で賃貸に出しやすいメリットがあります。

 

ただし、逆の立場、お部屋探しをしている方の気持ちになって想像するとわかりやすいんですが、

物件を探している方にとっては、契約満了は数年後の話なので、自分の状況を想像することも難しく、

よほどのことがなければ追い出されない普通のお部屋と比べたら、定期借家のお部屋はどうしても借りることに躊躇してしまいます。

そのため、普通賃貸借契約のお部屋と比べて、賃料や初期費用面を優遇してようやく入居者を見つけることができる、というのが現実です。

参考までに、平成26年の国の調査では定期賃貸借契約で入居している人は賃貸入居者全体の3.2%です。

 

また、定期賃貸借契約は別途「賃借人は「更新がなく、期間の満了により終了する」ことを契約書等とは別に、予め書面を交付して説明しなければならない」という制限があるため(上記比較表の一番上)、仲介をする不動産会社の契約時書類が増えます。

加えて、1年以上の定期借家契約は自動的に期間満了で解約になるのではなく、6ヶ月前に期間満了による退去通知を出す必要があるため、管理会社等がその通知を忘れると期間満了での解約ができなくなり、トラブルになります。

このように、普通賃貸借契約と比べてイレギュラーな対応があるため、仲介会社が扱いを嫌がります。

ぶっちゃけた話、この業界の方の多くは面倒くさいことを本当に嫌がるので、結果的に客付けが遠くなります。

 

定期賃貸借で貸し出しを考えているオーナーは専門に扱っている会社に依頼をするほうが無難です。

定期賃貸借専門!リロケーション専門!という表現を全面に出している会社に相談してみましょう。

複数社に声がけをして、対応を比較することもお忘れなく。

お部屋を探している方も専門で取り扱っている会社で話を聞くことをオススメします。

 

定期賃貸借契約 貸し手のメリット

■期間満了によって確定的に契約を終了することができる

→転勤で3年後には自宅に戻りたい、子供の学校の近くに住む期間のみ家を賃貸に出したいなどの、希望期間のみ賃貸に出すことができる

■建物取壊しなど、近未来に退去してもらう必要があるような計画を立てつつ賃貸に出すことができる

■1年未満の期間でも、賃貸の契約ができる(普通賃貸借契約では期間の定めがないものになります)

■家賃減額請求権を排除できる(普通賃貸借契約では特約で書いても無効です)

 

定期賃貸借契約 貸し手のデメリット

■賃料が相場の2~5割減でようやく入居者を見つけられるという現実がある

■契約期間の途中で解約できない(そもそもが期限付きのため、特約で中途解約条項がなければ中途解約不可)

 

定期賃貸借契約 借り手のメリット

■賃料等が相場より安い物件が多いため、安く部屋を借りることができる

■更新料がないため、5年契約等で住む場合、2年毎に更新料を払う場合などと比べ費用負担が少ない

■家を買うまでの間、戸建てなどにお試し住みなど、目的がはっきりした短期間の賃貸用途に向いている

■その他、短期で借りたい時に普通の物件は断られることが多いが、短期期間の定期賃貸借契約物件があれば断られにくい

■迷惑行為をする入居者が長く居住するリスクが少ない

→そういった入居者は再契約されないので、期間満了時にいなくなります

 

定期賃貸借契約 借り手のデメリット

■契約期間の途中で解約できない(そもそもが期限付きのため、特約で中途解約条項がなければ中途解約不可)

→レアケースとして、居住用の建物で床面積が200m2未満のものについては、転勤、療養、親族の介護などその他やむを得ない事情により、借主が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、借主から中途解約の申し入れが可能です。

■再契約特約がなければ、確定的に期間満了時に退去することになる

→再契約特約によっては双方合意であれば、という文章のため、貸主が拒否をすれば再契約できませんので注意が必要です。

 

空室対策で定期賃貸借契約を取り入れた成功例

都内の不動産仲介会社に勤める渡辺聡さん(仮名)の定期賃貸借契約をオーナーに提案した成功例紹介記事の引用です。

1階にラーメン店が入居している、木造3階建て、2DKのファミリー向けアパートでした。

1階で出るゴミの影響で、ゴキブリがやたらと出るんです。立地がさして良いわけでもありません。どうしても不人気物件となってしまい、8部屋のうち4部屋が空室という状況でした

賃料は8万円。このままでは毎月32万円の損失が出てしまう。そこで渡辺さんが提案したのは、「1年間の定期借家契約にしてその間は賃料を半分にし、入居者にお試しで住んでもらう期間を作る」というプランだった。

仮に4部屋とも向こう6カ月空室のままであれば、192万円の賃料収入が飛んでしまう。賃料を半額の4万円にして早期に入居を決めることができれば、1年間の賃料収入でこの192万円をカバーできるのだ。

「エリアの2DKアパートの賃料相場は8万円~10万円といったところでした。立地が良くないとはいえ4万円というのは破格で、募集し始めて1週間で15件ほど問い合わせがありましたね。1カ月半で4部屋とも埋めることができました」

入居者には「1年間賃料半額」の理由を正直に説明し、基本的には1年後に通常の賃料で更新したいと思っていることも伝えた。分かりやすく、丁寧な対応も成功のポイントだったようだ。実際に1年後は、4人の入居者とも通常の賃料での普通借家契約に応じてくれた。

引用先URL:不動産投資新聞

契約のもつ特性を考えて有効活用された本当に良い事例だと思います。

 

まとめ

ケース・バイ・ケースではありますが、定期賃貸借契約でお部屋を貸し出したいオーナー、借りたい入居者が出会ったときには、双方お得に賃貸借契約を結ぶことができます。

ただし、契約時も解約通知時も必要な手続き、書類等があるため、注意が必要です。

守られていないと定期賃貸借契約は認められません。

 

お部屋を探す方も契約の違いを理解してから契約しましょう。

定期借家の物件を借りる際は、契約期間、途中解約に関する条件があるのか、条件によっては再契約が可能なのかなどに注意が必要です。

 

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

この記事を書いた人

中谷
中谷
普段は賃貸不動産の管理業務を主軸に、ビルメンテナンス業務の改善提案、電気代やガス代の見直し提案しています。
マイベストプロ大阪でも紹介いただいています
【保有資格】宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
2級FP技能士・基本情報処理技術者