【シンプルに3つ】マンション共用部の電気代を削減するために行うべきこと
マンション共用部の電気代を少しでも抑えたいとお悩みの方(オーナー・管理組合・管理会社)向けに、
これらを取り組めば、無駄なくシンプルに電気代を削減できるというまとめを書いていきます。
共用部の電気代と言っても、主にマンションには2系統の電力契約が有り、電灯系と動力系です。
電灯系:主に照明(廊下、エントランス、外灯など)
動力系:エレベーターや水関係のポンプ、共用部のエアコンなど
今回は電灯系の削減を主に書いて行きます。
シンプルで効果の出やすい方法として3つ。
LED照明の導入、照明点灯時間の調節、新電力への切り替えなどの契約プラン見直しです。
では順番にみていきましょう。
目次
LED照明の導入
やはり共用部の電気代の代表格は照明です。
すでにLED照明への更新を終えている建物も多々あるとは思いますが、
従来の白熱電球や蛍光灯を使用している建物は、LED照明への更新を検討してみましょう。
近年、従来型照明の価格が上がり(理由は後述)、LED照明の価格が下がってきておりますので、取替にかかる費用やハードルが下がってきています。
白熱電球からLED照明に交換することによる節電効果
比較項目 | 白熱電球 | LED電球 |
---|---|---|
価格 | 約200円 | 約3000円 |
消費電力 | 90W | 6.4W |
寿命 | 約1,000時間 | 約40,000時間 |
電球使用個数 | 40個 | 1個 |
電球代 | 約8,000円 | 約3,000円 |
電気代 | 約58,320円 | 約6,912円 |
40000時間の 総コスト (電球代+電気代) | 約66,320円 | 約9,912円 |
Ex:電気代のみの 年間料金比較 (1日12時間想定) | 約10,643円 | 約756円 (約92%削減) |
※電気代は40000時間を使用した場合の比較。電気代単価は1kWhの料金27円で計算。
白熱電球との比較なら、単純に電気代が9割減です。
LED照明に取り替えることによるメリット・デメリットの中で最もわかりやすいことが、電気代の削減です。
また、点灯時間が長いことから、電球を取り替えに動くコストが少なくてすみます。
照明交換費用として別途お金を払っている場合はそれも削減できますのでコスト計算に入れましょう。
ちなみに、上記は電気代が大きくかかる白熱電球との単純比較のため、やや削減幅が大きく出ています。
実際にはすべての場所で白熱電球を使っていることは少ないので、蛍光灯との比較も表にしてみます。
蛍光灯からLED蛍光灯に交換することによる節電効果
比較項目 | 従来型蛍光灯(2本式) | LED蛍光灯 |
---|---|---|
価格 | 約800円 | 約20,000円 |
消費電力 | 82W | 32W |
寿命 | 約12,000時間 | 約40,000時間 |
電気代 | 約88,560円 | 約34,560円 |
40000時間の 総コスト (電球代+電気代) | 約90,960円 | 約54,560円 |
Ex:電気代のみの 年間料金比較 (1日12時間想定) | 約9,697円 | 約3,784円 (約60%削減) |
※電気代は40000時間を使用した場合の比較。電気代単価は1kWhの料金27円で計算。
こちらの方が実体に近い数字と思われます。
蛍光灯との比較でも、電気代だけでみたら6割減です。
これがマンション全体の照明数分変わってくることになります。
LED照明の導入を検討される場合は、すべての既設照明の調査をして、交換するLED照明を明示してもらい、実際の使用電力比較を提示してくれる業者をおすすめいたします。(下記は比較資料の参考例)
ただし、LED照明を実際に導入するには電灯交換や電気代だけではなく、多くの場合、初期工事が必要です。
電球を差し込む照明器具側の交換などを含め、施工費用等が必要ですので、
初期投資費用を節電金額で取り返す損益分岐金額までは、早くても5~7年程度必要になることが多いです。
既設設備の状況に応じて、電球や蛍光灯をはめ込む照明器具はそのまま使って、電球や蛍光灯だけをLED照明に交換する方法もありますが、
器具側が古い場合や、器具と照明の相性などもありますので、あまり電気工事業者さんはやりたがりません。
長寿命をうたうLED照明が、安定器や照明器具との不具合で短期間でだめになるケースもあり、発火事故などもあります。
不具合が出てから照明器具を後日取り替える二度手間や、余計な施工コストが発生するリスクもありますので、
器具を流用する場合はよく相談の上、検討してください。
逆にうまく既設の器具を流用しながらLED照明に変更できた場合は、初期費用がグッとおさえられるので、損益分岐まで2~4年で到達することもあります。
一方、照明器具ごと取り替える場合の注意点としては、器具の大きさが変わってしまうことがよくあります。
器具が小さくなった分、天井面の塗装剥がれなどが見えてしまうことがあるため、導入検討時によく確認しましょう。
対策としては大規模修繕などの塗装工事を伴う際に合わせて段取りを組み、交換するなどがあります。
蛍光灯照明の生産終了と値上がり
参考例:Panasonicの蛍光灯照明器具の生産終了お知らせページ
記事の頭で少し書きましたが、国の省エネ推進政策の流れで、既存照明はどんどん生産を終了していっています。
遅かれ早かれ、LED照明を導入しなければならい状況になっていくでしょう。
生産が終了していくということは、サポート終了や修理不可もそうですが、残っている蛍光灯照明などの価格も上がっていきます。
良い面としてはLED照明の普及促進をした結果、LED照明関係の価格は下落しています。
例えば、10年前と比べて、一つ6,000円くらいしていた電球が、1,000円以下まで安くなっています。
まだ取り替えてない方はメリットがたくさんありますので、ぜひ検討してみましょう。
必要な費用、削減できる電気代をシミュレーションしてから、導入する・しないの判断されることをおすすめいたします。
照明点灯時間の調節
2つ目の電気代削減方法です。
せっかくエコで省エネなLED照明にしても、無駄に点灯させる必要はありません。
明るいときは消す。ご家庭の照明と同じ用に運用しましょう。
照明点灯時間のコントールは大きくわけて3つです。
人感センサーで必要なときだけ点灯させる
家庭内では玄関やトイレ、マンションやビルでは入り口や共用トイレに使われることが多いです。
人が通ったときにセンサーが反応して、照明がつきます。
注意点としては、センサーが過剰に反応しすぎると意味がないため、
屋外で風によって何かが動いて、センサーが反応してしまう、などがないようにしましょう。
意図せずについたり消えたりしてちょっと怖い状況になります。
センサーの感度や範囲、照明点灯時間はある程度調節できるものが多いです。
照度(明るさ)センサーを導入する
こちらも最近どんどん導入している物件が増えています。
マンションのアプローチなど、外灯や植栽に置かれている電気を日が暗くなってきたときだけ点灯させたい要望に合わせて設置されています。
明るさに反応するため、設置位置の日の入り方や近くの照明位置にご注意ください。
また、時間ではなく明るさのため、天気の良い悪いにも対応できます。
タイマーでの照明オン・オフを制御する
シンプルに、何時になったら点灯、何時になったら消灯というスイッチ制御として、専用のタイマーを設置するパターンです。
停電を伴う点検などがある建物では、設定時間が実際の時間と少しずつずれていくことがありますので、1年1回程度、タイマーの時間が実際の時間とずれていないか確認することをおすすめします。
余談ですが、タイマー設定して、照明以外に連動で玄関のシャッターなどを動かしている場合、
時間がずれていることを見逃していると、シャッターの閉まった時間が予定と違うなど、オフィスビルやテナントビルではクレームがおきることもあります。ご注意ください。(大きな建物ほど停電を伴う点検ごとも発生します)
電力会社との契約を見直す
3つ目の電気代削減方法です。
夜間に照明を消すことはできませんので、どうしても最低限必要な電気代というものはあります。
動力に関しても、エレベーターやポンプを動かし続けるために電気を止めることはできません。
近年、その電気代が電力自由化によって、単価(契約プランや契約会社)を見直すことができるようになりました。
使用している電気代の金額や、今の契約プラン、使用状況によって驚くほど安くなることもあります。
小売電力自由化による見直しとは
2016年4月の法律改正により、家庭などに向けた電力の小売り(検針されたメーター数値から、請求金額を算出して請求する業務部分)が全面自由化されました。
これにより、従来の電力会社だけでなく、いろいろな電力会社と電気を契約できるようになっています。
この「家庭などに向けた」の部分ですが、要は使用料などが比較的少ない「低圧系電力」という意味になります。
言い換えますと、マンション共用部も「低圧系電力」に含まれます。
つまり、2016年4月から安いプランの電力会社に切り替えることによって、節約できるようになりました。
図解にすると下記のような感じです。
切り替えるといっても、なにかあったときの対応はこれまでと同じく地域の電力会社に決まっています(東京なら東電、関西なら関電)。
切り替えるのは最後の請求部分の会社だけですので、停電時などの対応は何も変わりません。(下記、黄色の矢印部分)
この小売電力の自由化は1棟オーナーもしくは管理組合の電気代が節約できるだけで、初期工事等は発生しませんので、
管理会社はあまり積極的に提案をしません。(工事がなければ管理会社の利益が生まれないため)
そのため、少しでも気になった方は、ご自身で新電力系の会社に削減提案を依頼するか、管理会社に削減会社を探して提案してもらってほしい旨を伝えましょう。
電力自由化を細かく書くと長くなってしまうので、一般的なエレベーターのついているマンション共用部電気代として考える場合、
5%~20%くらい削減できることが多いと思います。
最近増えてきたパターンとして、電気契約を変更して、浮いたお金を貯めて、共用部蛍光灯の交換費用に充てる場合や、
建物規模が大きい場合、削減金額も大きくなるため、LED照明の導入工事費用の一部にするために貯めておく物件などもあります。
余談:キュービクル保安点検費用の見直し
上では「低圧系電力」の電力切り替えを書いていますが、「高圧系電力」をお使いの建物でも削減できる費用はあります。
「高圧系電力」でも電力会社の切り替えは可能ですし、「高圧系電力」の建物に必ず設置されているキュービクル(変圧器)には法定点検の義務があり、これを行っている業者の点検費用は、相見積もり等で落ちることが多いです。
業者や管理会社に言われるがままに、必要な費用として契約していることが多いですが、
キュービクル点検の必須項目は国が定めているため、内容はほとんど変わりません。
数社で費用の見直しをさせることによりコストの削減が可能ですので、一度見直してみるのも良いと思います。
この記事のまとめ
・建物によって状況は様々ですが、電気代の削減として多くのマンションに当てはまる項目を3つにまとめました。
1:LED照明への切り替え
2:照明点灯時間のコントロール
3:電力会社(契約プラン)見直しによる無駄なコスト削減
・マンション、ビルごとに状況は異なりますが、上記3つは効果が出る建物が多いため、まだされてないことがある場合は検討してみましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事を書いた人
- 普段は賃貸不動産の管理業務を主軸に、ビルメンテナンス業務の改善提案、電気代やガス代の見直し提案しています。
マイベストプロ大阪でも紹介いただいています
【保有資格】宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
2級FP技能士・基本情報処理技術者
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